冷徹騎士団長の淑女教育
クレアはじっとしたまま、魔女の囁きのようなデボラの声を聴いていた。

クレアを、アイヴァンの手で葬り去ろうとするなど、予想以上に恐ろしい女だ。

だが、クレアは信じていた。たとえ女としては愛されていないにしても、アイヴァンはきっとクレアを大切に思ってくれている。

案の定、アイヴァンはデボラに向けて笑みを浮かべながら答える。

「彼女を失うくらいなら、自分が死んだ方がマシだ」



アイヴァンのその返答は、クレアの心に真っすぐ突き刺さった。

アイヴァンが王女としてのクレアを守ろうとしているのは分かっている。それでも、今の優しさを秘めた彼の口ぶりからは、まるでアイヴァンにとってクレアそのものがなくてはならない存在かのように思わされた。

胸が、沸き立つようにじんと熱くなる。

「子育てしているうちに、情でも移ったの? 馬鹿な男ね」

呆れたようにデボラは言うと、「娘より先に、その男を殺して」とダグラスをはじめとした辺りの男たちに命令をする。

「その男は確かに剣の腕が立つわ。だけど疲れ切っている今なら、束でかかればわけないでしょう」

「……どこまでも、邪魔な男だ」

クレアの近くにいるダグラスは忌々しげに呟くと、脇に差した剣を引き抜きアイヴァンに切りかかった。それを筆頭に、大勢の男たちが一斉に剣を掲げアイヴァンに襲いかかる。

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