冷徹騎士団長の淑女教育
それは、雲行きの怪しい夕方のことだった。

その日も夕方になってクレアのもとに来たアイヴァンは、クレアの宿題を見るなり眉をしかめた。

「綴りが二ヶ所間違っている。全てやり直しだ」

冷たく言われ、ぎっしりと文字を連ねた羊皮紙を、放るようにデスクに置かれる。

クレアが一日の大半を費やし、アイヴァンに指示された書物を模写したものだった。

さすがのクレアも、これには我慢がならなかった。

唇を引き結び、アイヴァンを睨みつける。

そんなクレアのささやかな反抗を目の当たりにして、アイヴァンは片眉を吊り上げた。

「なんだ? 言いたいことがありそうだな」




「……アイヴァン様は、どうしてそうまでして私をいじめるのですか……?」

「いじめる? 君は、俺にいじめられているように感じているのか?」

フッと、あざ笑うようにアイヴァンが口角を上げる。

「考えが子供だな」

「まだ、子供でございます……」

「そうだったか。あいにく、俺は子供が苦手でね。理解する気もない」

冷淡な笑みを浮かべ、クレアを見据えるアイヴァン。



「それなら、どうして私を連れ帰ったりしたのですか?」

「……深い意味はない」

あまりにもあっさりとした返答に、クレアはいたたまれなくなる。やはり、アイヴァンがクレアを拾ったのは気まぐれだったのだ。そしてクレアがあまりにも醜く教養がないから、嫌気がさして冷たく接しているのだろう。

< 21 / 214 >

この作品をシェア

pagetop