冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンの別宅の近くは、豪華な邸宅が点在する緑豊かな風景が続いていた。

王都の中心部からは少し離れていると、レイチェルが言っていたのを思い出す。

少し行くと、数件の店が並んだ小さな広場に出た。広場の中心には、三角屋根の厳かな石造りの教会がある。

『サンベルトリ教会』――教会前の看板に掲げられた教会名を、クレアは目視で読み取った。

身を隠すように人気のない教会の軒下にもぐりこんだクレアは、うずくまり、雨が止むのを待つことにした。

シトシトと泣き声にも似た雨音を聞いていると、次第にみじめな気持ちになってくる。

(今度こそ、本当に一人になっちゃった)



アイヴァンの言いつけを破り家を飛び出したクレアは、もうあの邸には戻れないだろう。

以前は一人になりかけたクレアを救ってくれた騎士がいたが、そんな幸運が二度も巡って来ないであろうことは、幼いなりにも分かっていた。

一人なんて慣れている。今までだってそうだった。クレアに味方なんていなかったし、それで平気だった。

それなのに、こんなにも胸が苦しいのはなぜだろう。


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