冷徹騎士団長の淑女教育
クレアの痣があまりにも不気味だから、少年たちは怖くなったようだ。

一番年長者らしき少年が、表情を険しくさせ、「あっちへ行け!」とクレアに怒鳴った。

「魔女は、災いを呼ぶ存在だ。一緒にいる人間を不幸にする」

追い払うように手であしらわれ、嫌悪感丸出しの表情をされる。

「早くどこかへ行けよ。そして、二度と姿を現すな!」





少年たちのまなざしは心からクレアを拒絶しており、クレアの胸の奥がズキリと痛む。

レイチェルに身の回りの世話をされ、アイヴァンから淑女としての厳しい教育を受ける日々に麻痺して、クレアはすっかり忘れていたのだ。

赤毛で生まれつきの奇妙な痣を持つ自分が、本来は忌み嫌われる存在であることを。



全力でクレアを追い払おうとする少年たちの声に圧されるように、クレアはじりじりと後ずさりした。

そして落ちたショールを拾うこともないまま、全速力で通りを駆け抜けた。



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