冷徹騎士団長の淑女教育
空の茜色が、徐々に色濃くなっていく。
重苦しい気持ちのまま、走り疲れたクレアはおぼつかない足取りで歩き出す。
そのうちに、クレアの住むアイヴァンの別宅が見えてきた。
白を基調とした瀟洒なその館は、色とりどりの花々の咲き誇る垣根に囲まれていて、とても美しい。
今更ながら、自分が住むにはもったいない場所だと思った。
クレアはみなしごで、教養もなく、手首には醜い痣まであるのに。
――『魔女は、災いを呼ぶ存在だ。一緒にいる人間を不幸にする』
今しがた聞いた少年の声を思い出し、クレアは足を止めた。
(もし、本当にそうだとしたら……)
クレアがいることによって、アイヴァンには何の得があるのだろう?
考えてみれば何もない。ただでさえ忙しい彼の日々を、更に多忙にしているだけだ。
それどころか、魔女の子かもしれない自分は、アイヴァンを不幸にする可能性だってある。
まるで重りをつけられたかのように、足がアイヴァンの邸に向けて動いてくれない。
クレアは唇を引き結ぶと、邸の手前で角を曲がり、行ったことのない道を行きはじめた。
重苦しい気持ちのまま、走り疲れたクレアはおぼつかない足取りで歩き出す。
そのうちに、クレアの住むアイヴァンの別宅が見えてきた。
白を基調とした瀟洒なその館は、色とりどりの花々の咲き誇る垣根に囲まれていて、とても美しい。
今更ながら、自分が住むにはもったいない場所だと思った。
クレアはみなしごで、教養もなく、手首には醜い痣まであるのに。
――『魔女は、災いを呼ぶ存在だ。一緒にいる人間を不幸にする』
今しがた聞いた少年の声を思い出し、クレアは足を止めた。
(もし、本当にそうだとしたら……)
クレアがいることによって、アイヴァンには何の得があるのだろう?
考えてみれば何もない。ただでさえ忙しい彼の日々を、更に多忙にしているだけだ。
それどころか、魔女の子かもしれない自分は、アイヴァンを不幸にする可能性だってある。
まるで重りをつけられたかのように、足がアイヴァンの邸に向けて動いてくれない。
クレアは唇を引き結ぶと、邸の手前で角を曲がり、行ったことのない道を行きはじめた。