冷徹騎士団長の淑女教育
「どうした? 浮かない顔だね」

翌日の昼過ぎ。いつものように庭の茂みでエリックと落ち合っていると、そんなことを言われた。

「また、大人の女性になりたくて悩んでいるの?」

「……まあ、そんなところよ」




檸檬色の花を口に咥え蜜を吸いながら、ダークブルーの瞳を細めてエリックが見透かすような視線を向けてくる。

「だから、何度も言ってるだろ? 君は僕にとっては、他にいないほど立派な女性だ」

「ありがとう、とても嬉しいわ。でも、あなたにとってはそうだとしても、他の人の目からはそうは見えないみたい」

はあっと、深いため息が漏れる。

「心外だな。僕の言葉じゃ、君は満たされないようだね」

「そういうわけじゃなくて……」

エリックから棘のある言葉が返ってきて、クレアは多少慌てた。親切な彼を傷つけたくはない。

返答をあれこれ悩んでいると、「ねえ」とエリックが意味ありげに小首を傾げた。

「前から知りたかったんだ。君をそんなに悩ませているのは、いったいどこの誰?」


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