冷徹騎士団長の淑女教育
呑気そうに見えて、エリックは絶妙に頭が切れるときがある。

はっきりと告げたことはないのに、クレアが叶わぬ恋に悩んでいることなど、とっくに気づいていたのだろう。

気恥ずかしさから、クレアはほんのりと頬を染めた。そして、「すごく大人の男の人よ」と端的に答える。

「すごく大人か……。その人がこの先も君を女性として見なくても、君はその人のことを想い続けるの?」

「ええ、そうよ」



辛いことだが、クレアはこの答えに自信があった。アイヴァン以外の人を好きになるなど、想像もできない。アイヴァンがくれたぬくもりと不器用な優しさは、クレアの胸に染み込んで一生離れはしないだろう。

たとえ彼がこの先結婚して、誰かのものになったとしても――。

フッと、エリックが笑った。

「随分はっきり答えるね。傷つくじゃないか」

「どうしてあなたが傷つくの?」

「――分からない?」



エリックが、やたらと大人びた微笑を浮かべる。そしておもむろに手を伸ばすと、持ったままだった檸檬色の花を、クレアの左耳に優しく刺した。

ハーフアップの編み込みから零れ落ちたプラチナブロンドが、エリックのいたずらに答えるかのように、サラサラと風になびいた。

「……やっぱり、すごく綺麗だ」
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