冷徹騎士団長の淑女教育
毎日のように血のにじむような鍛錬を重ね、アイヴァンの剣技はみるみる上達していった。

やがて、城の少年騎士団に招致された。

生涯の友人と呼べる”彼”と出会ったのは、丁度その頃だ。




全ては、自分を守るためだった。

信用のおけない他人など、守るに値しない。

だが九年前のあの日、アイヴァンは生まれて初めて自分以外の誰かを守りたいと強く思った。





この感情は、あくまでも親子愛に似たものだと、アイヴァンは長年自分に言い聞かせてきた。

年々、細くしなやかに伸びていく彼女の手足に気づいたときも。

悪戯に抱き着いた彼女の体から、女特有の柔らかさを感じたときも。

ふとした時に見せる、彼女の気品あるまなざしに目を奪われたときも。

脈打つ鼓動に気づかぬふりをし、これが娘の成長を喜ぶ親の心境なのだと、暗示のように言い聞かせ続けた。






だが、アイヴァンはついに認めざるを得ない状況に陥ってしまった。

――これは、親子愛とは異なる情だ。

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