君等の遺した最後の手紙は。(仮)
家庭環境
DV親父
目が覚めた。
カーテンから覗く陽が眩しい。ほうらやっぱり昨日から見た「あした」はきた。よるがきたらあさがくる。
その連鎖は死ぬまでずっと途絶えることなく続いていく。
昨日までの頭痛は消え、喉の痛みも鼻詰まりも昨日よりはマシになった。かっかと火照っていた体も夏の匂いを孕んだ風に冷やされて通常通りに戻っている。うちに体温計はないから、自分の感覚だけが頼りだ。
小さな頃からうちには体温計がなかった。
多分その理由は、熱があると分かったら保育園は預かってくれないから。病児保育は高いし、だからといって看病するのも面倒臭い。更に1日分の保育料も勿体ないというところだろう。
母親の心理くらい、一緒に暮らしていれば簡単に理解することが出来る。馬鹿みたい。
なんで私たちを産んだんだろう。
「…未侑?調子はどう?」
寝起き感のすごいお姉ちゃんの声。少し掠れ気味だ。
「うん!昨日休んだお陰でいい感じ、今日から学校いくよ!」
「ほんとに?大丈夫なの?」
そう言ってお姉ちゃんが私の額に手を伸ばす。
お姉ちゃんの顔が私の視界に入り、気づいてしまった。
「…少し熱い気もするけど…未侑ほんとに大丈夫?」
「大丈夫だよ!昨日よりはずっと……お姉ちゃん…昨日あいつに殴られた…?」
はっと怯えた色の隠れた驚きの表情を浮かべる。頬のところに青黒い痣ができていた。
「…やっぱりわかる…?」
「お姉ちゃん色白いから。そうじゃなくても姉妹だもん。分かるよ…。」
触れたら鈍く痛みそうな色。改めて父親の残酷さを実感する。
「やば、時間。ご飯作らなきゃあいつキレるじゃん…電車で事情は話すね?」
「分かった。手伝う。」
「ありがと。」