君等の遺した最後の手紙は。(仮)


ーーーカシャンッ
「おい妹。飯。姉、味噌汁と魚。早く出せ。妹、飯よそって運んだらこの皿片付けろ。」
「「はい」」
満足そうな父親の表情。私達は真顔で指図された行動に出る。
「真人さま。どうぞご飯です」
いつもの儀式。もう慣れた。父親は私のついだご飯を凝視する。
「つぎ方が汚い。ちゃんとよそえ。この使えないクソ娘がっ」
拳が私のお腹に飛んでくる。その場に蹲り、吐き気を抑える。お姉ちゃんは何も言わない。
「も…申し訳ありませんでした、真人さま…」
なんなんだこの苦行は。
お茶碗をそっと取り、杓文字で丁寧に整える。
「どうぞ…」
「・・・よしいいだろう。姉、味噌汁と魚はまだか。」
「みゆ…妹、味噌汁持っていって差し上げて。」
「はい、お姉様。」
毎度思うが気持ち悪い会話だ。

「どうぞ粗末な食事ですがお召し上がりください…」
あぁなんで私たちの家庭だけこんなことしなければならないんだろう。
「ほんとに粗末な食事だな。まぁ仕方ない、食ってやる。」
今日は少し機嫌がマシなようだ。
「妹…そろそろ支度しないと学校に間に合わなくなるわ」
「そ、そうですわね、お姉様。真人さま…申し訳ありません。私達は学校に行かなければなりませんので用意をして参ります。お召し上がりになったらそちらに食器は置いたままにされて下さい。毎日学校へ行かせていただきありがとうございます。」
我ながら見事な演技力だ。よくこんな流暢に敬語を使えるものだ。
「…お前昨日学校休んだらしいな…人の金で行っているということが分かってるのか?」
あぁ、なにかが癪に触ったらしい。また殴られる。
「はい…」
骨張った拳が頬に飛んでくる。
「ーーっつ…」
鈍い痛みと共に生温い液体が顎に伝う。どうやら父親の爪が伸びていたらしい。ぽたぽた血液が滴りそうになり、慌てて手で受け止める。
「ゃばぁ…お、おっほん…今日はここまでにしといてやる。学校行ってこい」
「は…はい ありがとうございます」
深く礼をし、部屋からカバンを取って一目散に玄関へ向かい、外へ出た。
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