君等の遺した最後の手紙は。(仮)

「俺が「意味」を求めるようになった理由は…みゆってやつと知り合って……彼女が死んだからだ。」

どくんと鼓動が波打つ。

中3のある時、病院でみゆって女の子と出会い、なにかに魅せられて話しかけた。それから仲良くなって色んな話をしていくうちにみゆが病気で、あと少ししかもたないと知る。
「私さ、死ぬ時は自分で決めたいんだよね…だから自殺する」
その発言が今でも脳裏に残っていて、辛くなる。
そして高校入試の後、落ちたからって名目で自殺した。

「だから…俺は人生の中での無駄をなくして、意味のあることだけして生きていきたい。」

心がずきりとする。
『人の死』によって変わるのは私だけじゃないんだ。

「そうだったんだ……。じゃあバドミントンは意味あるの?熱心に頑張ってるし」
目線はポスターのまま、口だけを動かす。

「バドは…体動かすこと健康にいいし昔からやってたしみゆも…してたらしいから。」
あぁ。彼はきっとその「みゆちゃん」が好きなんだ。きっと今も恋している。

うーん。何故だか残念な気持ちが心に蔓延する。

「だから俺が変わったのは高校からなんだ。だから完璧に素っ気なくとかできねーし、たまに普通のテンションでちまうんだよな」
ははっと照れたように笑う。
その見た事ない表情といつもと違う雰囲気にドキッとしてしまう。

それならばもう
「じゃあ体育会、一緒に頑張んない?生きてるうちでさ、そんなに『無駄』なことってないんじゃないかな?体育会も、体育会までの日々も、友好関係も…何かの為にきっとなるよ。だから…未侑は林田くんと一緒に頑張りたい。」

彼がほんとの事を伝えてくれた分、思ったことを本音で返す。

しばしの沈黙。
「・・・わかった。やってみるよ。」
熟考した末、一緒にしてくれるらしい。

「んあーなんかスッキリした。話してなんか吹っ切れたっぽい!ありがとなっ」
彼もみんなと変わらない「男の子」なんだな〜とほんわかしてしまう。

さっきから何故か胸がときめく。・・・何でだ??

ポスターはあと少し。空はほんのり濃紺にそまりつつある。
「こっちこそありがと、言ってくれて。」
「おう」
ふと湧き上がった疑問。
「ところでさ、なんで未侑に話してくれる気になったの?」
本当に純粋に分からない。

「・・・それは…なんか未侑が同類っぽかったから」
「なんじゃそりゃ」
真顔で言うものだからキョトンとしてしまう。
「だから…なんか隠してるみたいな、俺と同じ匂いがしたの。」
確かに隠してるし、親友を亡くしている。
だけどまだこのことを言えるほど、私は彼を信用していない。
「うーん、なるほど…」
「まぁフィーリングってやつだな」
思いがけずカラッと笑うから今日は心臓が弾みっぱなしだ。

「そうなんだぁ…ていうかやばいよ!はやくポスター仕上げちゃお!明日から部活したいし!」
「お、おう!そうだな!」
色鉛筆でちゃちゃっと色付けしてしまう。目立たせたい所はカラーペン。絵の具は面倒だから使わない。

「今度…いつか未侑のことも教えろよ…」
囁くように言われ、慌てて頷いた。
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