君等の遺した最後の手紙は。(仮)


「ごめん。待たせた。ここで乗っけて先生見つかったらやばいからもう少し先な。」
そう言って駅の方へ一緒に歩いていく。彼は自転車を押していて、さりげない優しさが滲み出ている。
こりゃモテるよ。
「あ、うん…」
もう断れる雰囲気じゃない。
三分ほど歩いたところで急に止まり、林田くんが自転車に跨る。
「ん。」
乗れ。そう目で合図され、荷台のところにそっと腰掛ける。
「ここ持っといて。危ねーから。」
そう言って片手で私の手を掴み、腰のベルトを持たされる。

「林田くんモテたでしょ…」
思わずつぶやく。
「モテねーよ!いくぞ!」
「あ、うんっ」
ゆっくり、次第に加速してほの涼しい風に乗る。

自転車に乗るのなんて何年ぶりだろうか。小学生以来だ。
懐かしい風と、林田くんから醸し出される甘酸っぱいベリーみたいな香りにキュンとする。
坂を登って、下って。直進約500mで右に曲がると直ぐに駅。

最初は戸惑ったけどもうすぐ駅となったらもう少し乗っていたいと思ってしまう。
都合のいいやっちゃな…。さっきまで苦手意識持ってたくせに。
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