君等の遺した最後の手紙は。(仮)

初恋の芽吹き

「…ふぅ…間に合った…」
肩にからった鞄を膝の上に置いて一息つく。まだ肌に希翔君の匂いが纏われているようにほんのり甘い匂いが……する気がする。

私だけに見せてくれた溌剌とした笑顔。

ーー私が彼の心の扉を開けたのかな…?

心がとくんと弾む。
友達とは違う特別な感じ…なんだろう、この思い、なんて表したらいいんだろう…。

なんだか今日は希翔君のことしか考えられない気がする。



『ギャップ効果』
その言葉が頭を過る。これは確か部活で恋バナ的をしていた時、小坂 桜雫(こさか るな)ちゃんが言ってたことで
『人のいつもと違う面を見つけたらときめいちゃって、恋に落ちやすくなるんだよ。特別感とかがあればますますね。』
って。



……ん?…恋?

「んなわけっ!」
思わず大声が出る。しまった、電車の中だった。

「あっ…ごめんなさーい」
恥ずかしすぎる。今日は空いていてよかった…。

自分の降りる駅に着いたらそそくさと席を立ち、定期をピッとしたあと降車する。
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