約束~悲しみの先にある景色~
(……私、お父さんから贈り物なんて貰ったこと無かったな…)


贈り物が貰える定番である誕生日やクリスマスなんて、逆に私への罰やお仕置き、しつけが増えるだけだった。


少なくとも、私が虐待され始めてからは、お父さんからは何も貰えなかった。



「ユンちゃんはそんなに過去に何かあった訳では無いんだけど…ただ公にされてないだけかもしれないけどね…。でも、ユンちゃんはpromiseの中で1番って言って良い程ファンサービスをしてくれるの。それこそ、本当にアイドルの鑑なんだよ」


その言葉に、私ははっと思考を切り替える。


「ふーん…。promiseって凄いね…。今度、曲聴いてみようかな」


その時、ガラガラと前のドアが開いて、担任の男の先生が生徒と挨拶を交わしながら入ってきた。


輝星と席が前後だから自分の席まで移動する必要は無いけれど、さすがに前を向かなければいけない。


それに、途中だった荷物整理も終わらせたいのに、“曲聴いてみようかな”という私の言葉に分かり易く反応した輝星は、前を向きかけた私の腕を掴んだ。


「え、それ今す…」


“え、それ今すぐに聴いた方がいいよ私のイヤホン貸してあげるから聴きなよ!”


とでも言おうとしたのか、輝星がイヤホンを取り出した瞬間。



キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……
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