約束~悲しみの先にある景色~
運転手さんに対し、まあね、俺の変装力を馬鹿にしちゃ困るよ、と、トユンさんは一瞬にして笑みを零して。


「そう、この子が俺の義理の妹になる瀬奈ちゃん」


高級車を汚してはいけないと、涙を拭きながら最大限の注意を払って姿勢良く座っていた私を優しく引き寄せ、運転手さんに紹介してくれた。


「あ、瀬奈です…、宜しくお願いします」


そう言うと、運転手さんは、


「キム家の専属運転手を務めております、山口と申します。瀬奈様、今後とも宜しくお願い致します」


かなりかしこまった挨拶をしてきた。


「え、私なんかに敬語使わなくて大丈夫ですよ…」


丁度出発した車の中から、遠くなっていく桜葉駅を横目で見ながら私がそう言うと。


「いえいえ、何を仰るんですか!あ、私の事は何とでも呼んでもらって構いませんので、」


バックミラーで後方に座る私達を見ながら、山口さんーと呼ぶことにしたーは、逆に頼んできた。


「そうだよ瀬奈ちゃん、この人の事は近所のおじさん並に気軽に捉えていいからね?俺は山ちゃんって呼んでるけど、瀬奈ちゃんもそんな感じで呼んじゃいな。俺、山ちゃんに敬語も使ってないし」


山口さんの、


「此処から家までは約10分程かかります」


という説明に、まだ震えていた私の肩を抱き寄せながら口を挟んだトユンさん。
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