約束~悲しみの先にある景色~
「あっ…」


不意に目眩がして、私は傍にあったソファーの端を掴んで動きを止めた。


頭がくらくらする。


(やっぱり、寝た方がいいんだけどね…)


分かっているんだけどな、と思いながら、私はぎゅっと目を閉じた。


「瀬奈ちゃん?どうしたの?」


promiseのライブの歌に合わせて口ずさみかけていた義兄は、こちらを振り返った。


「いや……何でも、ないですっ…」


寝不足が、明らかにたたっている。


何もしていないのに起こっている激しい心臓の動悸が、それを証明していて。


(気持ち悪…)


「やっぱり、寝不足なんじゃない?少し寝た方がいいよ?」


「っ……そうです、よね…」


世界的アイドルであるキムさんからの忠告を、それなりに有難く受け取った私は、ゆっくりと目を開けた。


もちろん、夢が怖いせいで寝れるわけもないけれど。


テレビから目を離し、私に心配そうな目を向けている彼と、目が合った。


「キムさん、私は大丈夫です。…ほら、そんな事よりテレビ!見ないならチャンネル変えますよ」


無理矢理に笑顔を作って、そう言うと。


「んもう、本当に大丈夫なの…?」


と、訝しげに首を傾げながらも、キムさんは素直に前へ向き直った。


それを見た私は、階段へ行こうと足を動かそうとして2、3歩進み。


「んっ……え、?」
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