約束～悲しみの先にある景色～

実際、今ここで目をつぶったら余裕で寝れると思う。


けれど、もし私が寝てもすぐに起きてしまうかもしれない。


深い眠りに落ちて、夢を見なかったとしても。


それに、キムさんと初めて会う前日からずっと続いてきた悪夢を自ら見るような行動を取りたくなくて。


キムさんと始めて会う前日も、トユンさんと初めて会って興奮したその日の夜も、引っ越しをして疲れ切った日の夜も、それ以外の日も、私はお父さん関連の夢を見続けてきた。


今ここで寝たら、トユンさんのせっかくの休日が台無しになってしまう。


トユンさんの邪魔をしたくないし、何より私と一緒に過ごしたいと言ってくれた彼の期待を裏切る事になる。



｢…ト、ユン…さんの、…邪魔したく、無いからです｣


だから私は、何とか口角を上げて彼に話し掛ける。


(寝ちゃいそう…)


｢そんな、何でよ？別に、誰も瀬奈ちゃんに寝るなって言ってないよ？｣


眠過ぎて、視界がぼやける。


｢そう、ですけど……。でも、寝たら…｣


｢寝たら、俺のオフの日が潰れちゃうから？瀬奈ちゃんと居たいって言ったのに、台無しになっちゃうから？｣


言いたかった事を全て言われ、私は身動きが取れないまま首だけを微かに縦に動かした。