約束~悲しみの先にある景色~
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長い長い、夢を見ていた。


1度は起きたものの、また気絶して眠ってしまった私ー南 瀬奈ーは、やはり幼い頃の自分に戻っていた。


『さーてと。…せーな、ちゃん?』


ガタガタ、よりも酷く震えている私の方に、またお父さんは近付いてくる。


あの後数十秒でビールをがぶ飲みしていたから、まあ酔いは回りかけているだろう。


『やっ……!』


という事は、いつもよりも酷いお仕置きをされるのは目に見えている。


『…俺があっちに居た間、なーんにもしなかった瀬奈ちゃんは、お仕置きだね?』


(…ほら、)


『や、だ……!』


“お仕置き”という言葉は、私にとって“暴力”を意味する。


(やだ、嫌だ嫌だっ!)


何故、私だけがこんな目に遭わないといけないのか。


こんな事なら生まれてきたくなかった。


友達は皆、明るい顔をして学校に通っていた。


他愛もない家族の話を耳にする度、


“私のお父さんだって、最初は優しかった。だから怖くないんだ”


そう、言い聞かせてきた。



『瀬奈、来い!』


来い、と言われても片足が紐で固定されているから動けるわけないのに、それを知っているはずなのに、お父さんは私が彼の方に行かないから怒って手を振り上げた。


『やだあぁっ!』
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