約束~悲しみの先にある景色~
「……ふっ、」


すると、私の謝罪の言葉が聞こえたのか、お父さんはまた鼻で笑って立ち上がり、今度はテーブルの近くに散らばったガラスを片付け始めた。


(……)


何とかお父さんのあの冷ややかな視線から回避出来た私は、ふっと強ばった身体の力を抜いた。



「これは絆創膏じゃ駄目ね、面積が大きいから…ガーゼと、包帯でいいかな…。瀬奈、もうガラス刺さってない?」


そのまましばらく虚ろな目をして宙を眺めていた私は、お母さんの質問をする声ではっと我に返った。


「っ、うんっ…」


ガラスはもう大丈夫、と、私は自分で両足を覗き込んで傷の具合を確認しながら頷いた。


「じゃあ、水で洗おうか。…ちょっとこっち来て、歩ける?」


その声に反応した私は、ゆっくりと立ち上がって。


「い、痛いいぃっ!」


何個もの傷口と床との摩擦によって伝わる痛みに、思わず叫び声を上げた。


「瀬奈、痛いのかな?お父さんが抱いて運んであげるよ、足だからお風呂場で良いよね?」


そしてあろう事か、お父さんが私を“抱く”という提案をお母さんに持ち掛けて。


(やだ)


(やだやだやだやめてやだ!)


私は叫び声を上げるのをぴたりと止め、


「大丈夫、歩ける……」


と言おうとしたけれど、既に話は進み。
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