約束~悲しみの先にある景色~
次の日も、その次の日も、またその次の日も…。


お父さんは、私に乱暴な言葉遣いをしてこなかった。


最も、最初の1週間程は私も警戒していたけれど、今となっては前と全く変わらない生活を送っている。



「お父さんー、抱っこしてー」


「はいはい。全く、瀬奈は甘えん坊だな。誰に似たんだ?」


「お父さんじゃないの?絶対そうよ」


「何でそうなるんだよ、お母さんに決まってるよ。なあ、瀬奈?」


そんな些細な楽しい会話も、今では当たり前。


もう、私はあの日の出来事は夢か何かだったのだと思う様になっていた。


お父さんが包丁を使うのは、当たり前だけれど料理をする時だけ。


それを私に向ける事も、私を怒る事もない。


ただ両足の裏の怪我だけが、私があの日にガラスを踏んだ事を物語っているけれど。


その事でさえも、私は自分に都合良く、


“私は遊んでてコップを割って、遊び心でガラスを踏んだ”


と、解釈していた。


まるで、あの日にお父さんがお母さんについた嘘のように、全てを捉えていた。




けれど。


「瀬奈、遊ぼうか?」


それから約1ヶ月後のある日。


お父さんとの楽しかった日々は、またもや終わりを告げた。
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