約束~悲しみの先にある景色~
続くお父さんの言葉に、私は彼に気付かれない様に眉をひそめた。


(えっ…?お父さん、何を言っているの……?)


確かに、ガラスの上を歩く事が悪い行為だとは分かっている。


けれど、私をガラスの上を歩かせる様に仕向けたのは、紛れもなく。


(お父さん、でしょう……?)




今思えば、始まりは本当に些細な事からだった。


私が間違えて2つのコップ両方にオレンジジュースをいれなければ、もしあの場にお母さんが居れば、もしあの包丁類が、全て無かったら。


こんな地獄の様な日々は、幕を開けなかったのに。


溜まりに溜まったお父さんのストレスを、彼は私で発散しなかったかもしれないのに。



この時の私は、まだ知らなかった。


包丁を突きつけられる事よりも恐ろしい恐怖が、今までに感じた事の無い苦しみが、私を待ち受けている事を。


お父さんからの愛をまるで貰えない生活が、私を待っている事を。



何故ならこの時の私は、今日の1件でお父さんからの恐ろしい言動は終わりを告げて、きっと今まで通りの楽しい生活が待っていると思っていたのだから。
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