約束~悲しみの先にある景色~
その日もまた、お母さんが仕事で家を空けていて。
休日で、時刻は夜だった。
同じく仕事だったお父さんが夕方になって帰ってきてからの、急なお母さんからの連絡。
『ごめんお父さん、今日後輩が仕事でミスっちゃって、それの直しをしないといけなくなったから…今日は帰れなさそう。瀬奈の面倒、頼んでもいい?』
簡潔に言えば、それは残業。
お人好しで優しくて、誰にでも好かれて頼り甲斐のあるお母さんだからこそ、断れなかったのだろう。
「ああ、分かったよ。今日は帰れないんだね?」
その時、テレビでアニメを見ながら笑っていた私にも、お父さんのその声と、スピーカーフォンになっていたお母さんの声は届いていた。
心無しか、“帰れないんだね?”の所が、念を押すかの様に強めに発音されている気がした。
『そうなの。終電まで間に合わないだろうから、今日は会社で寝る事になりそう……。明日は仕事を早めに切り上げるから、それまで瀬奈の事、頼んだわよ』
「分かった。瀬奈の事は、任せておいて」
まただ。
また、“任せておいて”の部分が、若干強めに発音されている気がする。
けれど、電話を切ったお父さんが纏う不穏な空気にまるで気付かない私は、テレビを見ながら彼に問い掛けた。
「お母さん、帰って来れないの?お父さんと過ごせるの、嬉しいなー」
休日で、時刻は夜だった。
同じく仕事だったお父さんが夕方になって帰ってきてからの、急なお母さんからの連絡。
『ごめんお父さん、今日後輩が仕事でミスっちゃって、それの直しをしないといけなくなったから…今日は帰れなさそう。瀬奈の面倒、頼んでもいい?』
簡潔に言えば、それは残業。
お人好しで優しくて、誰にでも好かれて頼り甲斐のあるお母さんだからこそ、断れなかったのだろう。
「ああ、分かったよ。今日は帰れないんだね?」
その時、テレビでアニメを見ながら笑っていた私にも、お父さんのその声と、スピーカーフォンになっていたお母さんの声は届いていた。
心無しか、“帰れないんだね?”の所が、念を押すかの様に強めに発音されている気がした。
『そうなの。終電まで間に合わないだろうから、今日は会社で寝る事になりそう……。明日は仕事を早めに切り上げるから、それまで瀬奈の事、頼んだわよ』
「分かった。瀬奈の事は、任せておいて」
まただ。
また、“任せておいて”の部分が、若干強めに発音されている気がする。
けれど、電話を切ったお父さんが纏う不穏な空気にまるで気付かない私は、テレビを見ながら彼に問い掛けた。
「お母さん、帰って来れないの?お父さんと過ごせるの、嬉しいなー」