約束~悲しみの先にある景色~
溜まりに溜まった涙が、右目から頬を伝って流れた。


「うるせえな…そんな事言ったって誰もお前の事なんか許さねえから少しは黙ってろクズが!」


途端、小学低学年の私には聞き取りにくい早口の叫びが、彼の口からほとばしった。


「うっ……、」


聞き取れたのは、最後の“クズが!”という言葉だけ。


もちろん私は友達に言ったことは無いけれど、たまに友達が誰かに冗談で言っているのを聞いた事がある。


その時に言われた側の反応からして、“クズ”という言葉は悪い意味だと分かったけれど。


まさか、その言葉を面と向かって実の父親から実の娘に言われるなんて思いもしなかった。



お父さんは、私の事をどう思っているのだろう。


娘をクズだなんて言う時点で、私を嫌っているのかもしれない。


私があんぐりと口を開け、お父さんの方を見たまま固まっていると。


「…クローゼットに隠してたからお母さんに気付かれなかった俺って、本当に天才だわ」


とか何とか言いながら、彼は自分の持っていた袋の中を漁ってある物を取り出した。


(えっ……)


「えっ……」


思わず、心の声が漏れてしまう。



何故なら、それは───。
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