約束～悲しみの先にある景色～
｢お前が悪い｣


彼の声と共に、私の頭の上からビニール袋が裏返される。


ガシャガシャと嫌な音を立てて降ってくるそれは。


私が1ヶ月前に割って、お父さんが1人で全て片付けていた、ガラスのコップの破片だった。


前よりも砕かれているから、きっとお父さんが片付けた後に自分でまた小さく割ったのかもしれない。


それは全て、私の頭からガラスの雨を降らせる為に。



身体のあちこちに、ガラスが刺さる。


服の中にまで侵入してきたそれは、容赦なく私の肌に傷跡を残して滑り落ちていく。


床にもガラスが落ちている為、身動きすら取れない。


腕から、血が流れる感触がした。



｢おら痛いか？痛いだろ？お前が素直に俺の質問に答えて俺の言う事を聞いてればこんな事にならなかったんだよ分かるか！？｣


狂った様に喚き続ける彼に、私は何も言えなかった。


ただただ身体中が痛くて、謝りたくても怖くて声を出せなくて。


お父さんの方を見る事も出来ずに、心の中でごめんなさいごめんなさいと謝るばかり。



｢…返事もしねえのかよ、俺はお前をこんな風に育てた覚えは無いぞ！誰だよ、誰がお前をこんな風に育てたんだよ、おい！｣


そんな私を見て痺れを切らした彼が喚き、袋の中に少しだけ残っていたガラスを自分の手の平に出し、勢い良く私の顔面に投げつけた。
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