約束~悲しみの先にある景色~
「人の質問に答えられない悪い子瀬奈ちゃんには、お仕置きだね」


クローゼットから何かの入ったビニール袋を取り出してきたお父さんが、私の目の前に立ってそう言い放った。


「や、待って…!」


その袋の中に何が入っているか分からないけれど、前に包丁を持ち出したくらいだから、今回も酷いものが中に入っているに決まっている。


「ご、ごめんなさい…」


必死で、許して欲しくて、また叩かれたくなくて、あの平手打ちの感触を二度と味わいたくなくて、その気持ちだけが私の中を支配していて。


私の口から出たのは、恐怖に震える謝罪の言葉。


「言っても無駄だよ、これがしつけなんだから」


前は謝ったら何となく許してくれたのに、今ではにやりと笑うだけのお父さんが怖くて怖くて、どうすればいいか分からなくて。


「ご、めんなさい…、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


とにかく、何度も何度も謝罪の言葉を繰り返した。


何回か彼の目を見て、私が軽い気持ちで謝っていないことを上を見上げる事で伝えて。


(許して、何するの、止めて、ごめんなさい、どうすればいいの、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)
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