約束~悲しみの先にある景色~
『俺は、君が生まれてきてくれて良かったよ』


『君なら大丈夫だよ』


そう、頭の中で空想上の兄の声がこだまして。


それは、私が父親から言われたかった言葉で、それを代弁してくれているのが空想上の兄で。


彼のおかげで、私は。


(私なら、まだ大丈夫)


(まだまだ、余裕で我慢出来る)


そう、思う事が出来て。


いつもいつも、私は居ない兄に救われていた。


家ではゴミの様に扱われ、学校では素肌を出さない変な人だと捉えられている私にとって、想像するだけの兄はヒーローそのものだった。



そんな私が、お仕置きの一環としてベランダに血だらけで放置されて、此処から逃げたい一心で団地のベランダから飛び降りて脱出を図って(2階だったから大した怪我はしなかった)。


結局、飛び降りて逃げていた最中にお父さんに捕まり、上半身裸にされて棒状のもので沢山殴られた日から約2週間後。
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