迷子のシンデレラ

 仮面舞踏会とは言え、参加者は事前に招待状をもらった人のみが行くことが出来る。

 今回は上流階級の人でもなかなかお目にかかれない眉目秀麗な方が来るという噂から女性で不参加など皆無に等しいらしく、欠席する知り合いの招待状をくすめてくるなんて手荒な真似も難しかったようだ。

 だとしたら、智美は正式な招待客ではないわけだし、行かない方向で十分過ぎるほどありがたいのに、恵麻が「智美と行く」と、言えば行くのだ。
 お嬢様の恐ろしさを垣間見た気がする。

 智美にしてみれば偽って忍び込むようなもので、後ろめたい気持ちもある。
 けれど恵麻は背徳感から来る高揚でエキサイトしてしまっていた。

 智美は溜息混じりに訴えた。

「だいたい仮面を付けていては麗しの君かどうかも分からないのでしょう?」

「もしかしたらっていうのがいいんじゃない。
 ま、私は麗しの君はタイプじゃないかな」

 恵麻クラスになると麗しの君では心揺さぶられないようだ。

「さぁ。せっかく可愛くしてもらったんだから。
 智美は覚悟を決めなさい」

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