迷子のシンデレラ
「仮面舞踏会なんて、いつの時代よって気乗りしなかったのよね。
顔を隠して何が面白いのって。
でも……」
恵麻が心底楽しそうに口角を上げる。
「智美が一緒だなんて最高ね」
楽しそうな恵麻を尻目に智美は不満顔だ。
「それにしたって、やっぱり、私には……」
「今さら後悔しても遅いわよ」
意地悪な顔をされても可愛らしいから、憎めない。
ご令嬢の恵麻はパーティや晩餐会みたいな上流階級の集まりへ参加することが多く「智美と行ければ楽しいんでしょうけど」と、嬉しいけど困ってしまう愚痴をいつもこぼしていた。
今回は顔を隠す仮面を付けていく。
「智美も仮装すれば行けるじゃない!」と、満面の笑みで言われれば、恵麻のお供として行くのなら……と渋々了承するしかなかった。