迷子のシンデレラ
それとも、顔の大半をマスクで覆って素性がバレる心配がないせいなのか。
それもまた、仮面舞踏会だからこその秘め事のような甘いひと時。
曲はムーディなしっとりとした曲調に変わり、ゆったりと踊る彼に合わせる。
自然と距離は近くなり、彼の胸元にほとんど顔をうずめるような形で寄り添うように身を委ねた。
人の波に押され、ダンスホールの中央で踊る気恥ずかしさ。
それを上回る爽快感。
華やかな彼にみんなの視線が集まって、お相手をしている智美も気分が高揚する。
雰囲気に酔いしれ、気づけばダンスホールの端にいた。
踊りながら壁際へ来てしまっていたようだ。
あんなにも注目されていたのに、輪から外れた智美たちを見咎める者は誰一人いない。
光溢れるホールの中央は眩しく、そこから外れれば紛れてしまうのもまた仮面舞踏会だからだろうか。
ウェイターからシャンパンを受け取ろうとしている彼が「飲むかい」と目配せしたので、首を横に振って遠慮した。
「そう」とだけ口にした彼はシャンパンを手にすると、一気にあおってグラスを置いた。