迷子のシンデレラ

 戸惑う智美の前でエレベーターの到着を告げる上品な音がして扉があんぐりと口を開けた。

「フッ。邪魔、されちゃったな」

 余裕な笑みを浮かべる彼へどうにか微笑みを返した。

 自分らしくない。
 そう心が警笛を鳴らすのに、体は彼の魔法にかかってしまったように彼を突き放せない。

 ダンスのステップを踏むようにエレベーターの中へエスコートされ、そのまま乗り込んだ。

 エレベーターは上の階を指している。
 ダンスホールより上の階は宿泊客用のホテルだ。

 彼は最上階のボタンを押した。

 踊っていた時にも感じた彼のぬくもりに、彼の息遣い、そして高貴で男らしい香り。
 その全てが色っぽくて智美は自分がそんな彼に肩を抱かれていることに夢見心地になっていた。

 無駄なお喋りをせず、ただエレベーターに乗る時間がこんなにも魅惑的に感じたことはなかった。

 ほどなくしてエレベーターは最上階にたどり着いた。

 エスコートされるまま最上階に降り立ち、扉の前まで進むと、彼は内ポケットから鍵を取り出して差し込んだ。

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