迷子のシンデレラ
扉の内側へ入るとすぐさま彼は壁に両手をついた。
彼の腕の中で覆い被さるように上から見つめられて逃げ場がない。
そもそも彼に見つめられたら逃げられなかった。
「顔の一部が隠れているとね。
隠れている部分を自分の中で都合よく補正するらしいんだよ。
だから仮面舞踏会は一夜の夢にぴったりなのさ」
そう。やはりこれは一夜限りの夢。
夜が明ければ魔法は解けてしまう。
火遊びにやけどしたって構わないのだ。
そう思えるほど智美は先ほどいた会場の雰囲気に酔っていた。
そして、彼が自分を見つめる甘い視線に。
下から覗き込んだ彼はレースを鼻で押し上げた。
そのまま優しく唇が重ねられる。
柔らかな感触を確かめるように触れた唇を食んで尚も感触を楽しんだ後に離された。
「唇がよく見えないままのキスなんて初めてだ。
燃え上がるよ」
色気を隠そうとしない彼がレースの奥にある智美の顎を軽くつかむと親指で顎のラインをそっと撫でた。
それだけで背筋へゾクゾクと甘い疼きを走らせる。