胎動
☆☆☆

結局、叔母は5針縫う大けがをしていたようだ。


慣れないことをするとこういう結果になるのだ。


叔母へ対する同情心なんてかけらもなかった。


包丁が使えなくなるほどの期間、家事をしていなかったということなんだから。


今この家からあたしがいなくなったら、2人はどうやって生きて行くつもりなんだろう。


「今日はお腹一杯食べられてよかったね」


お風呂から出て、自室に戻ってソレに向けて言った。


ソレはさっきからご機嫌で、あたしにくっついている。


ソレの体のベタつきは徐々に消え去り、今は短い毛が生えてきているのがわかった。


どんどん大人の姿に近づいてきているのだろう。


「お前は一体どんな姿になるの?」


あたしがそう聞いても、ソレは首を傾げてこちらを見上げているだけだった。
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