胎動
言葉が理解できているのかどうかわからないが、頷かれるとほっておくわけにもいかない。


「おいで」


あたしはソレを抱っこしてトートバッグの中に入れた。


昨日よりも随分と重たくなっている。


今朝用意した食肉の血も全部飲み干していたし、この子の成長は止まらないようだ。


未熟児だったらどうしようかと不安だったから、とりあえずは安心だ。


「問題はお昼ごはん」


あたしはそう呟き、昼用に準備しておいた肉を手に取った。


部屋に置いておけば勝手に食べてくれると思って用意したのだけれど、さすがにこれをバイト先へ持って行くことはできない。


「あ、時間やばい。行ってから考えよう」


あたしは慌てて家を出たのだった。
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