胎動
この子の食事になるようなものがないか、お店に来る前の間に色々と探しながら歩いていたのだ。


たどり着いたのは店の裏手だった。


搬入はすでに終わっているので、そこに人の姿はない。


代わりに子猫が数匹固まって座っているのが見えた。


今どき野良猫がいるなんて珍しいが、チャンスだった。


「ほら、ご飯だよ」

ソレに向けて言う。


ソレは生きている猫を目の前にして、たじろく様子を見せている。


今までは血が染み込んだ物や、カットされた肉から血を吸っていたからだろう。


「大丈夫。立派な牙があるんだから」
< 119 / 231 >

この作品をシェア

pagetop