キミガ ウソヲ ツイタ
思わずポロッと本音が出てしまい、葉月が怪訝な顔をしたので、俺は慌ててうまい言い訳を考える。

「……なんで?」

「それはホラ……みんなで行くと男たちが調子に乗ってただの大食い大会みたいになっちゃうかも知れないだろ?それに別のところにしようとか、わがまま言い出すやつもきっと出てくるから」

「ああ、なるほど……それもそうやな」

葉月は俺の苦しい言い訳に納得してくれたようだ。

それから土曜日の11時に駅で待ち合わせの約束をして、俺の降りる駅のふたつ手前で葉月は軽く手を振って電車を降りた。

俺も閉まったドアの窓ガラス越しに、右手をあげてそれに答える。

電車が動き出して葉月の姿が見えなくなると、俺は嬉しさのあまり叫びたい衝動をこらえながら両手をグッと握りしめ、ドアに向かって小さくガッツポーズをした。

普段葉月は俺のことを、同じ課の同じチームで働く同期くらいにしか思っていないだろうけど、これを機に少しは一人の男として、延いては恋愛対象の一人として意識してくれたらいいなと思った。


< 23 / 61 >

この作品をシェア

pagetop