キミガ ウソヲ ツイタ
いつも人に嫌われないように笑って、相手をイヤな気持ちにさせないように顔色を窺っていた俺は、葉月のハッキリとものを言うところや、誰に対しても臆することも媚びることもなく毅然としているところに惹かれたのだと思う。

葉月に少しでも近付きたい一心ですぐにバレる嘘をつき、一緒にデカ盛り天丼を食べに行く約束をして、喜び勇んで初めて休日に二人だけで会ったけれど、結果的には俺が期待していたような展開にはならなかった。

天丼を食べたあとはほんの少し辺りの店を見て回っただけで、『急に大阪から幼馴染みが出てくることになってん。4時半にうちに来るて言うてるからそろそろ帰るわ』と言う葉月と4時になる少し前に駅前で別れた。

誕生日のお祝いらしいこともまったくしなかったし、次の約束なんてもちろんなかった。

誕生日を一緒に祝いたいと言えば少しは俺の気持ちに気付いてもらえるかと思ったのに、葉月にはまったく伝わらなかったようだ。

おかげで用意していたプレゼントも渡せないまま、俺の偽誕生日作戦は無惨な形で幕を閉じた。



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