模擬彼氏
「えっ?……」

見つめ合った寺原は、真剣な顔をしている。

「もしかして……」

私は、自分の唇に触れた。

「そう。キスしたの。」

私は寺原の腕を離して、一歩後ろに下がった。


「紗雪?」

「どうして!そんな事、するの?」

声が震える。

体が震える。

「どうしてって……付き合ってたら、当たり前だろう。」

その答えを聞いて、私の顔が赤くなる。

なんだか、私の知ってる寺原じゃないみたい。


「ほら、早く車に戻ろう。」

寺原は、私に右手を差し出した。

「いい。一人で帰る。」

「えっ?紗雪?」

私はそのまま寺原に背中を向け、大通りに向かって走った。

「紗雪!」

寺原の声が聞こえたけれど、私はそれを遮るかのように、耳を塞いだ。
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