模擬彼氏
夕食が終わって、部屋に戻る足取りは、まるで足枷がついているように、重かった。


父の紹介してくれる人に、会いたくない。

会えば、寺原と比べてしまって、絶対気に入る事はないもの。

どんな相手が来たって、好きな人には、敵わない。


「あーあ。こんな時に限って、寺原に会いたい。」

溢れる涙が落ちないように、顔を上げた時だ。

目の前に、寺原が見えた。

「圭一さん……」

会えた。

会いたいと思ったら、会えた。

我慢できずに、涙が零れる。


「あの……」

一方の寺原は、なぜか挙動不審だ。

「……何か、ご用でしょうか。」

「えっ?」

私は、寺原を覗き込む。

「いえ、先ほど私に会いたいと、仰っていたので……」
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