模擬彼氏
「聞いて……いたの?……」

私は、さっきの心の声が、実際に声に出ていたのかと思うと、恥ずかしくて、赤くなる顔を押さえた。


「どうやら、用事という程でも、なかったようですね。」

寺原は、少し残念そう。

「ご用がある際は、いつでもお呼び下さい。いつ何時も、お伺い致します。」

そう言って一礼をすると、寺原は私の横を通り過ぎようとした。

「寺原。」

意味なく、話しかけてみる。

「はい。」

お互い、同じタイミングで、振り返る。


「あなたがそう言うのは、私がこの家のお嬢様だから?」

寺原は、目をパチクリしている。

「お嬢様?どうか、なさいま……」

「私が寺原を呼ぶのは……」

私は寺原の目を、真っすぐ見つめた。

「寺原じゃなきゃ、嫌だからよ。」
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