かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「……悪い、仕事の電話だ」

「大丈夫ですよ。どうぞ」

覗き込んできた颯志くんに笑顔で答えると、彼は席を立ってスマホを耳に当てながら、バーの出口へと歩いていった。

ぽつんと残されてしまった私を気遣うように、拓真さんが話題を振ってくれる。

「『ハネムーン』はお好みに合いましたか?」

「はい。とても」

再び『ハネムーン』に口をつけると、拓真さんはグラスを拭きながら嬉しそうに頬を緩めた。

「……拓真さんは、颯志くんの後輩っておっしゃってましたよね?」

「ええ。大学の後輩です。もう十年近い付き合いになりますか……」

十年――ちょうど、私と颯志くんが疎遠になり始めた頃だろう。

つまり、私が知らない颯志くんを拓真さんはたくさん知っているんだ。

バーの入り口の方を見て、颯志くんが戻ってこないことを確認した私は、カウンターに身を乗り出して、控えめな声で拓真さんに尋ねる。
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