マイ・ディア・タイガー
「あの、今日は本当にありがとうございました。今週中くらいはまだ完治しなくて、迷惑かけてしまうと思うんですけど…」
「いいっていいって。四條は本当にいつもよくやってるんだから、これくらいなんの問題もないって」
「あ、ありがとうございます…っ」
田中先輩を筆頭に、他の先輩や同学年の部員達も「気にすんなよー」と言ってくれる。
本当にありがたいなあと思いながら頭を下げると、「四條」と低い男の人の声で、名前を呼ばれた。
……この声は…。
「あっ、トラ先輩!お疲れ様ですっ」
「おー、お疲れ。四條、もう帰れる?」
後輩達に挨拶を返しながら、5メートルくらい先から声を投げて来た。
皆の「え?」と二度見するような視線が私に突き刺さる。
しかしこれに至っては私自身も「え?」と気の抜けた声で生返事をしてしまった。
「トラ先輩と四條って、付き合ってるんですか?」
この場を代表して、田中先輩が聞いてきた。
そんな事、あるわけない。
そんな分かりきった質問をされて虎頭先輩の機嫌が悪くなる前に、私が答えねばと、「違いますっ!」と久し振りにお腹の底から声を出した。
「帰りの迎えがない私を気遣って、送ってくれてたんです。でも、あの、もう大丈夫なので…」
絶対安静と言われていた期間を終えて、ゆっくりだがもう歩ける程には回復している。
これ以上受験生の虎頭先輩に迷惑をかけるわけにはいかないのだ。