マイ・ディア・タイガー
田中先輩の家に着くと、家というより店の個室に案内された。
サッカー部で集まる時も、ここを使う事が多いらしい。田中先輩は勉強をしながら、時々お店を手伝っていた。
日曜日で混んでいたが、その内ピークを過ぎて落ち着いて来た。虎頭先輩は遠慮なく私の詰めたタッパーの中身を食べている。
それに気づいた田中先輩が、「弁当持って来たんですか?昼飯ならうちで出したのに」と言った。
「あー、悪いし」
「何言ってんすか、こっちが勉強見て貰うんだから気にしないで下さいよ」
「でも今回は四條がくれたし、いいよ」
虎頭先輩がそのまま伝えると、田中先輩は納得したように「なんだ、そうだったんですか」と言った。
田中先輩はこういう時、変に茶化したりせずにいてくれるから有難い。
これが田中先輩でなかったら、めちゃくちゃからかわれるだろう。そしたら虎頭先輩にも迷惑をかける。
私のそんな悩みとは裏腹に、虎頭先輩は「美味いな、これ」と言って完食してくれた。
不覚にもその言葉にキュンとしながら、どうせならただの透明なタッパーでなく、もっとちゃんとした容器に入れてくればよかったと女子力の低さを悔やんだ。
虎頭先輩の勉強の教え方は、びっくりする程わかりやすかった。
誘導の仕方が上手い。学校の先生でもたまに説明がよくわからない時があるのに、先輩はとても丁寧に、どういう行程で何故そうなるのかを説明してくれた。
水高に前期で受かるくらいだし頭がいいとは知っていたけれど、先輩はなんとなく勉強ができる人ではなく、本当に頭がいい人なんだ。