Shooting☆Star

☆5話☆

フードコートの隅のテーブルを確保し、ダイチの斜向かいに座って、気づいたことがあった。顔を上げて目線を合わせていても、違和感がない。
隣に座って目線を合わせると、どうしても見つめ合うみたいになってしまうけど、これなら自然にお互いを見られる。
逆に、すぐ隣に座った祐樹とは、肩を寄せるだけで恋人同士に見えるだろう。
女同士で向かい合い、顔を寄せあって1枚のメニューを眺める。
「ねえ、サンドイッチシェアしない?コンビーフのとフルーツサンド。」
「いいねー。両方食べたいし!」
盛り上がる二人に「じゃあ、俺が買ってくるよ。4人分。」と、ダイチが席を立つ。
祐樹は何か考えているようで、買ったばかりのかき氷を、サクサクとひたすら崩していた。

平日の日中なのに、どうしてこんなに人が多いのだろう…?と、呆れてしまう程に混雑する園内でも、ダイチと祐樹は目立っていた。
帽子を目深に被り、サングラス掛けていても、ファンにはすぐにわかるのだろう。
それでなくても祐樹の明るい金髪はどこにいたって目立つのだし、長身のダイチも目を引くのだ。
時折、ファンとおぼしき女の子や若い男性に声を掛けられ、サインや写真をせがまれたりする度に、ダイチと祐樹は笑顔を見せ「ごめんね、プライベートだから。」と、手を合わせるだけの握手やハイタッチのようなものでその場を受け流す。
百香はカレンと手を繋いで、二人から少し離れた場所で久々の遊園地を楽しんでいた。お互いの視界からは離れないギリギリの位置で、男女で別行動をする。
カレンは不満そうだが、百香としては出来る限り余計なトラブルは避けたかった。
午前中いっぱい遊び回り、そろそろお昼を食べようと、合流してなんだかやっとダブルデートのような空気になったところだ。

ダイチがサンドイッチの載ったトレイを運んでくる。
「かわいいー!!」
「写真撮ろ!」
盛り上がる女子二人を眺めて、祐樹が何か思いついたような顔をした。
「ちょっとまってて。」と、席を立って、「あ、俺の分、食べちゃっていいから!」と言い残してどこかへ走って行ってしまう。
祐樹の後ろ姿を見送りながら、百香はサンドイッチに手を伸ばす。
「きっと、また、くだらない事考えてるよね、アイツ。」
誰の返事も待たずに口に押し込んだサンドイッチの、瑞々しいレタスにコンビーフの塩気が心地良い。
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