Shooting☆Star
3人がサンドイッチをすっかり平らげて、デザートのアイスクリームに取り掛かる頃、祐樹が大きな袋を2つ抱えて戻ってきた。
「何買ったの……?」
キャラクターの絵のついたショップの袋を眺める百香とカレンに、その袋を1つづつ渡しながら、祐樹が「プレゼント。開けてみて。」と、促す。
中身は、大きなフードの付いたケープだった。
それぞれ背中にピンクとブルーのキャラクターのイラストが入っている。テーマパーク内で羽織っている女子も多い、実用性も無く安っぽい割には高価だけど人気の品だ。
ブルーは百香の、ピンクはカレンの着ているワンピースにぴったりの色合い。
ケープを持ったまま顔を見合わせる二人を見て、ダイチが「なるほど……」と、呟いた。
「とりあえず、それ、羽織って。フードも被って。」
それから、「写真撮ろ」って言ってスマートフォンのカメラを内側に向けて、4人で顔を寄せる。
他人に会話を聞かれたくない時は、これが自然で便利だ。
なるほど。小さなモニターに映る自分達を見て、祐樹が何をしようとしているか、すぐにわかった。
カメラに向かってドヤ顔をした祐樹が声を低く呟く。
「こうしたら、二人が入れ替わっても、バレないんじゃないかな?」
「入れ替わるって……」
「このまま、着てる服と荷物を交換するってこと。」
祐樹は、そのままバシャーッと音を立ててシャッターを切る。「スマホのシャッター音て大袈裟だよなー。」なんて言いながら、数枚撮って満足気に全て保存ボタンを押した。



人目を忍んで女子トイレの個室にカレンと二人で滑り込む。
お互いの服を交換し、鞄の中身を入れ替える。
据え付けの化粧台の前で、互いの姿をチェックし、サングラスを交換した。
フードを被り、そのまま外に出ようとする百香をカレンが引き止める。
「あ、百香、待って。これ。」
差し出されたのは、最近流行りのピンクの口紅だった。
百香は普段、明るい色の口紅を付けない。
慌てて百香もポーチからオレンジの口紅を差し出す。
「百香ってさ、やっぱり大人だよね……」
オレンジ色の口紅を眺めながら、カレンが呟く。
「なにそれ。趣味がババアって言いたいの?流石、売れっ子は流行りに敏感ねー。」
嫌味でなくそう言って、百香は従姉妹を眺める。
従姉妹という贔屓目を無しにしても、彼女は本当に可愛い。
百香とカレンは時折、実の姉妹と思われるくらいには仲が良い。
互いの口紅を塗りあって、鏡越しに笑い合う。
「完璧。」
髪色も髪型も違うけど。
出ているのが前髪だけなら髪型もわからないし、サングラスとフードで顔も殆ど隠れてしまう。
百香とカレンは身長も同じだし、体型も殆ど一緒だ。
互いに顔は父親似だけど、口元だけは母親に似た。
歳の離れた二人の母達は、双子のようにそっくりだった。
祐樹の思い付きは完璧だった。
これならダイチと並んでも、百香だとわからないだろう。
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