Shooting☆Star
結局、結論は出ないまま、茉莉子の所属事務所の担当者と話し合う事になった。
「早い方がいい」と、代表に呼ばれ、先方の会社に出向く。
先方の代表と、担当マネージャー、広報担当と、当事者である茉莉子。
社長と百香、弘也の3人で、応接室に通される。
「木下さん、お久しぶりですなぁ。相変わらずお美しくいらっしゃる。」
そう言って笑う代表を名乗る男に、社長は「そちらも相変わらず、お盛んそうで。」と、作り笑いを返す。

話し合いという事実確認は、淡々と進んだ。
先方は茉莉子が子供を産むというのであれば契約は直ぐにでも切りたいが、スポンサーとの契約がある為、彼女には違約金を払ってもらうことになる。
それは、お互いに負担が大きいだろうから、弘也君と彼女には、子供を諦めることを勧めたい、と主張する。
「諦めなさい。君達はまだ若いから、いくらでもやり直しが効くんだ。」
その男達は、そう言って、隅の席で俯いたままの茉莉子を横目で見る。
「同じ業界ならわかるでしょう?うちも商売なんです。商品に傷付けられて売り物にならんじゃ困りますわ。」
広報担当と名乗る男は、嫌味ったらしく百香と弘也を眺めて言葉を続ける。
「若い女の子マネージャーに当てがって、それでも足りないって言うんですかねぇ。」まるで百香を値踏みするかのように視線を向ける代表は、広報担当の言葉に下品な笑みを浮かべた。
「なっ……」
咄嗟に抗議の声を上げようとした社長の手を、相手に見えない位置で百香が握って、その指先がトントントンとゆっくりリズムを取る。まるで、小さな子供を落ち着けるように、百香は社長の手を握る。
弘也はこれが自分が謝罪する立場でなければ、すぐにでも、相手に掴みかかっていただろうと思う。あからさまな屈辱の言葉に、マネージャーってそういうんじゃないだろ……と、怒りが湧いた。
そっと百香に視線を向けると、百香は静かに笑っていた。
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