Shooting☆Star
「社長かぁ…」
言い難そうに告げた百香の言葉に、祐樹はなるほど、と呟く。
それは、謝りたくもなるのもわかる。
祐樹の知る限り、社長は独身を貫いていたし、生涯仕事が恋人だと宣言していた。
まさか、百香が社長の娘だとは思っても見なかった。
でも、ずっと不思議に思っていた事が、なんとなく納得出来た。
百香が何故ずっとS☆Sのチーフマネージャーなのか、何故、事務所を自由に使えるのか、S☆Sだけに存在する“メンバーとマネージャーは敬語を使ってはいけない”という謎のルール。
おそらく、これらは会社に何か不測の事態が起こった時に、たくさんの可能性から百香を守る為のものだ。
それなら、ダイチと百香の付き合いを頑なに隠そうとしたのも、百香が弘也を守ろうと奔走した話も、納得出来る。
百香はそれを、どんな思いで抱えてきたのだろう。
--母はこれでいいって言ってましたけど。--
初めて百香と話した時のことを思い出す。
木下清香……あの人なら、仕事もパンプスで構わないと言うだろう。
言われてみれば、確かに百香は社長に似たところがある。スーツで佇むその立ち姿とか、ハイヒールを好んで履くところとか、緊張した時の口元とか。
こんな単純なことに、何故、今まで気付かなかったのだろう……。
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