私はマリだけどなにか?
2「私はマリ、パートだけど何か?」
小樽という街は日本全国とアジアからの観光客や修学旅行生でいつも賑わっていた。
観光の目玉に、ガラスを販売する店やオルゴールを扱う店が多く点在する。そのな中の観光みやげ店で、マリは夕方五時から不定期に週3回パートをはじめることになった。
観光みやげといっても水晶やタロットカードなどを扱う「スピリチュアルショップTG」という店で販売の助手をしていた。店ではシゲミとアヤミという双子の先輩がマリの指導役。
「マリちゃんは顔が怖いから何時も笑顔でいなね。なんでもハ~イって言ってりゃ客は良い気分になるから。適当にやってりゃいいのよ。買うものは買うし買う気が無い人はいくら安くったって買わないから、適当でいいからね。適当で…」
バックヤードで聞いていた店主のテイジが「シゲミちゃんさあ~ちゃんと教えてね、ちゃんと。最初が肝心だから。そうしないとシゲミちゃんやアヤミちゃんのように僕が舐められるから…」
「店長、私達舐めてませんけど…小バカにするけど」
マリは、このシゲミ先輩はひと味違うと思った。どことなく自分と同じ臭いがして親近感を感じた。パート初日から客引きをさせられた。
恥ずかしそうにマリは「いらっしゃいませ~~~」
それを見ていたシゲミが「声、小さい」
「あっハイ、いらっしゃいませ~」
「まだ小さい!チョット私の見てな」
そう言いながらシゲミは店頭に立ち「いらっしゃい。あなたにあった水晶を選びますよ~。開運・恋愛成就・家内安全・運気上昇いかがですか?今思っている彼との良縁を結びませんか~」
「シゲミさん、いつもそんないい回しするんですか?」
「するけど?なんで?」
「あっ、いやいいです」
こうしてマリのパートははじまった。働いて数日たった頃「マリ姉いる?」例の3人組がひやかしでショップを訪れた。
シゲミが「なに?マリちゃんの友達かい?」
マリは罰悪そうに「そうです、あいつら私をひやかしに来たんす」
「そう!まあ、見てな」
シゲミが不気味な笑みを浮かべて3人に近づいた。
「あんた達マリちゃんのお友達かい?」
「はいそうで~~す」
「まあ、入りなよ。見ていったら?気に入ったのがあったらハゲ店長に内緒で超安く売ってあげるからね。なんでもいいなよ」
「は~~い」3人は笑いながら店内に入ってきた。
「そこの赤い髪のあんた。この水晶手に持ってごらん」
そういって水晶を手に握らせた。シゲミは目を瞑り首を傾げて「う~~こっちかな?」
違う水晶を握らせ「・・・これだ。これがピッタリだね」
「な・なにがです?」
「相性だよ。あんたとこの水晶のバイブレーションが合うかどうか視てるのさ」
「相性なんてあるんですか?」
「当然だよ。あんた知らなかったのかい?なんにでも相性というのがあって、バイブレーションがあった時は相乗効果が生まれ、なんでも思い通りになりやすいのよ。そういう意味で昔から水晶は重宝されてるのよ。これどう?」
「相性ですか?」
「そうよ、特に男と女は相性が肝心なんだ。よく覚えておきなね」
「これください」満面の笑みだった。
「いいよ、他の二人は?」
「私達も視てください」
「よし、3人まとめたら超安くするよ。いいかい、あそこの
ハゲ店長には内緒だよ。ばれたらまた頭の毛が抜けるから」
3人は店長の頭を眺めて…にやけた。
「その2人も手にとってみてよ、私が視てあげる」
結局3人はシゲミに水晶を買わされ帰って行った。
マリが「シゲミさんありがとうございました」
「何が?」
「いや、安く売っていただいて」
「いいかい、ああやって売るのは悪い例だよ」
「なんで悪い例なんですか?みんな喜んで帰りましたけど」
「こんな透明な石ころでいいことあるわけ無いじゃん」
「えっ? 今言ったこと全部デタラメなんですか?」
「それは解らないね。そこのハガキ見てごらん」
段ボールには沢山の手紙やハガキが詰められていた。
「あとで何通か読んでごらん。願い事が成就したっていうお礼の手紙だよ。それ全部がそう」
目を丸くしたマリが「やっぱり何らかのパワーがあるのでは?」
「それは絶対無い!売ってる私が言うんだから間違いない」
「そうですか。で、さっき言ってた良い売り方とはどんな売り方ですか?」
「自分達で選ばすの。そうしたらクレームは無いよ」
「自分で?」
「そう、途中までは同じやり方なんだけど、最後に付け加えるの『私はそう感じたんだけどお客様はどう感じますか?』ってね、そして最後の選択はお客に決めてもらう。いわば、客を誘導しながらわたしの売り方に逃げ道を作ったの。これ、あのハゲ店長の直伝。ああみえてもあの中途半端ハゲって、けっこうしたたかなんだ…」
マリは、やっぱ、おとな社会は学生と違い面白いと感心した。
「いらっしゃいませ~ あなたと相性のいい水晶いかがですか?お手伝いしますよ~」呼び込みをするマリの姿があった。その姿を見てシゲミは微笑みながら頷いていた。
翌朝学校で「マリおはよう」花岡の声。
「先生、おはようございま~す」
「今日の放課後、部室に来てくれないかな?」
「いいですけど…なんすか?」
「うん、その時話すよ」
放課後マリは部室に行った。
「おう、忙しいところ悪いなっ。実はマリに先生聞きたいことがあるんだ」
「改まって、なんすか?」
「マリが最近、不良の女子高生3人と付き合ってるという噂を耳にしたんだが本当か?違ったらごめんな…」
「あ~あいつらか…本当だけど…なんで?」
「本当って、お前大丈夫なのか?不良と付き合って」
「あいつらが弟子にしてくれって言うから、しかたなく付き合ってるんだけど…私、あいつらを更正させてる最中なんだ…なんか悪いの?」
「マリの言ってること先生解らないから、解るように順を追って説明してくれるかな?」
マリは事の成り行きを説明した。
「本当か?先生お前のこと信じていいのか?」
「私、ジッタに嘘ついたことありませんけど…」
「そうだよな、先生信じるよ」
「それにしても何処から聞いたの?そんな噂」
「うん、3年生が話してるのを聞いたんだ」
「誰だ?そいつ…」
「ほらっ、お前はすぐに、そやってむきになるから噂に信憑性が出るんだ。お前を知ってる人はマリならやりかねないってなるんだよ」
「ちっ!くだらん学校だな」
「まぁそう言うなって。みんな心配してるんだから」
「分かった。先生もそんな噂、否定しておいてよね!頼むよ鼻をカジッタ先生。それよりか早く嫁さんみつけなよ、まだ頭の毛が残ってるうちに……」
「お前、俺の嫁さんのこと心配してくれてたのか?」
「そうだよ、もし嫁の来てが無かったら、私が嫁になってやってもいいかなって考えてたんだ。私でどう?」
「えっ?マリお前、俺のことそんな風に思ってくれてたの?」
「そんな風にってどんな風にさ?」
「いや…その…好きとか嫌いとかそんな風…でへっ」
「なに?言ってんだジッタ!ばっかじゃねえのいい年ぶっこいて冗談も分からねえのか?だから髪の毛薄くなるんだぞ」
「でも先生嬉しいよ」
「死ね!ハゲジッタ!ば~~か!」
「いらっしゃいませ~~あなたの・・・」
マリはショップのパートがすっかり板についてきた。
例の3人がまた現われた。
赤毛が「マリ姉働いてる?」
「おう、ちょうど良かった。3人に話あったんだ」
「なんすか?」
「あんたらその格好を変えなよ。私、先生に呼び出されてさ『マリお前、最近3人の不良と付き合ってるのか?』って言われたんだ。なにそれ?って聞いたら噂が出てるぞって。バッカじゃねぇのって言い返したけど、よく考えたらあんたらの格好はどう見てもヤンキーだよ。もう、その格好やめなよ。頭も黒くして、相手を下から上に舐めるように見る癖も駄目!分かった?その格好は禁止!それが嫌なら縁を切る・・・」
「マリ姉がそう言うなら…わかった」
3人はすごすごと退散した。
それから数日が経ちマリのもとにまた3人が現われた。
髪を黒く染めスカート丈も普通になった。その姿を見たマリが「へ~あんたら可愛くなったね、そのほうがずっといいよ」
「なんか、恥ずかしいけど……」
小樽という街は日本全国とアジアからの観光客や修学旅行生でいつも賑わっていた。
観光の目玉に、ガラスを販売する店やオルゴールを扱う店が多く点在する。そのな中の観光みやげ店で、マリは夕方五時から不定期に週3回パートをはじめることになった。
観光みやげといっても水晶やタロットカードなどを扱う「スピリチュアルショップTG」という店で販売の助手をしていた。店ではシゲミとアヤミという双子の先輩がマリの指導役。
「マリちゃんは顔が怖いから何時も笑顔でいなね。なんでもハ~イって言ってりゃ客は良い気分になるから。適当にやってりゃいいのよ。買うものは買うし買う気が無い人はいくら安くったって買わないから、適当でいいからね。適当で…」
バックヤードで聞いていた店主のテイジが「シゲミちゃんさあ~ちゃんと教えてね、ちゃんと。最初が肝心だから。そうしないとシゲミちゃんやアヤミちゃんのように僕が舐められるから…」
「店長、私達舐めてませんけど…小バカにするけど」
マリは、このシゲミ先輩はひと味違うと思った。どことなく自分と同じ臭いがして親近感を感じた。パート初日から客引きをさせられた。
恥ずかしそうにマリは「いらっしゃいませ~~~」
それを見ていたシゲミが「声、小さい」
「あっハイ、いらっしゃいませ~」
「まだ小さい!チョット私の見てな」
そう言いながらシゲミは店頭に立ち「いらっしゃい。あなたにあった水晶を選びますよ~。開運・恋愛成就・家内安全・運気上昇いかがですか?今思っている彼との良縁を結びませんか~」
「シゲミさん、いつもそんないい回しするんですか?」
「するけど?なんで?」
「あっ、いやいいです」
こうしてマリのパートははじまった。働いて数日たった頃「マリ姉いる?」例の3人組がひやかしでショップを訪れた。
シゲミが「なに?マリちゃんの友達かい?」
マリは罰悪そうに「そうです、あいつら私をひやかしに来たんす」
「そう!まあ、見てな」
シゲミが不気味な笑みを浮かべて3人に近づいた。
「あんた達マリちゃんのお友達かい?」
「はいそうで~~す」
「まあ、入りなよ。見ていったら?気に入ったのがあったらハゲ店長に内緒で超安く売ってあげるからね。なんでもいいなよ」
「は~~い」3人は笑いながら店内に入ってきた。
「そこの赤い髪のあんた。この水晶手に持ってごらん」
そういって水晶を手に握らせた。シゲミは目を瞑り首を傾げて「う~~こっちかな?」
違う水晶を握らせ「・・・これだ。これがピッタリだね」
「な・なにがです?」
「相性だよ。あんたとこの水晶のバイブレーションが合うかどうか視てるのさ」
「相性なんてあるんですか?」
「当然だよ。あんた知らなかったのかい?なんにでも相性というのがあって、バイブレーションがあった時は相乗効果が生まれ、なんでも思い通りになりやすいのよ。そういう意味で昔から水晶は重宝されてるのよ。これどう?」
「相性ですか?」
「そうよ、特に男と女は相性が肝心なんだ。よく覚えておきなね」
「これください」満面の笑みだった。
「いいよ、他の二人は?」
「私達も視てください」
「よし、3人まとめたら超安くするよ。いいかい、あそこの
ハゲ店長には内緒だよ。ばれたらまた頭の毛が抜けるから」
3人は店長の頭を眺めて…にやけた。
「その2人も手にとってみてよ、私が視てあげる」
結局3人はシゲミに水晶を買わされ帰って行った。
マリが「シゲミさんありがとうございました」
「何が?」
「いや、安く売っていただいて」
「いいかい、ああやって売るのは悪い例だよ」
「なんで悪い例なんですか?みんな喜んで帰りましたけど」
「こんな透明な石ころでいいことあるわけ無いじゃん」
「えっ? 今言ったこと全部デタラメなんですか?」
「それは解らないね。そこのハガキ見てごらん」
段ボールには沢山の手紙やハガキが詰められていた。
「あとで何通か読んでごらん。願い事が成就したっていうお礼の手紙だよ。それ全部がそう」
目を丸くしたマリが「やっぱり何らかのパワーがあるのでは?」
「それは絶対無い!売ってる私が言うんだから間違いない」
「そうですか。で、さっき言ってた良い売り方とはどんな売り方ですか?」
「自分達で選ばすの。そうしたらクレームは無いよ」
「自分で?」
「そう、途中までは同じやり方なんだけど、最後に付け加えるの『私はそう感じたんだけどお客様はどう感じますか?』ってね、そして最後の選択はお客に決めてもらう。いわば、客を誘導しながらわたしの売り方に逃げ道を作ったの。これ、あのハゲ店長の直伝。ああみえてもあの中途半端ハゲって、けっこうしたたかなんだ…」
マリは、やっぱ、おとな社会は学生と違い面白いと感心した。
「いらっしゃいませ~ あなたと相性のいい水晶いかがですか?お手伝いしますよ~」呼び込みをするマリの姿があった。その姿を見てシゲミは微笑みながら頷いていた。
翌朝学校で「マリおはよう」花岡の声。
「先生、おはようございま~す」
「今日の放課後、部室に来てくれないかな?」
「いいですけど…なんすか?」
「うん、その時話すよ」
放課後マリは部室に行った。
「おう、忙しいところ悪いなっ。実はマリに先生聞きたいことがあるんだ」
「改まって、なんすか?」
「マリが最近、不良の女子高生3人と付き合ってるという噂を耳にしたんだが本当か?違ったらごめんな…」
「あ~あいつらか…本当だけど…なんで?」
「本当って、お前大丈夫なのか?不良と付き合って」
「あいつらが弟子にしてくれって言うから、しかたなく付き合ってるんだけど…私、あいつらを更正させてる最中なんだ…なんか悪いの?」
「マリの言ってること先生解らないから、解るように順を追って説明してくれるかな?」
マリは事の成り行きを説明した。
「本当か?先生お前のこと信じていいのか?」
「私、ジッタに嘘ついたことありませんけど…」
「そうだよな、先生信じるよ」
「それにしても何処から聞いたの?そんな噂」
「うん、3年生が話してるのを聞いたんだ」
「誰だ?そいつ…」
「ほらっ、お前はすぐに、そやってむきになるから噂に信憑性が出るんだ。お前を知ってる人はマリならやりかねないってなるんだよ」
「ちっ!くだらん学校だな」
「まぁそう言うなって。みんな心配してるんだから」
「分かった。先生もそんな噂、否定しておいてよね!頼むよ鼻をカジッタ先生。それよりか早く嫁さんみつけなよ、まだ頭の毛が残ってるうちに……」
「お前、俺の嫁さんのこと心配してくれてたのか?」
「そうだよ、もし嫁の来てが無かったら、私が嫁になってやってもいいかなって考えてたんだ。私でどう?」
「えっ?マリお前、俺のことそんな風に思ってくれてたの?」
「そんな風にってどんな風にさ?」
「いや…その…好きとか嫌いとかそんな風…でへっ」
「なに?言ってんだジッタ!ばっかじゃねえのいい年ぶっこいて冗談も分からねえのか?だから髪の毛薄くなるんだぞ」
「でも先生嬉しいよ」
「死ね!ハゲジッタ!ば~~か!」
「いらっしゃいませ~~あなたの・・・」
マリはショップのパートがすっかり板についてきた。
例の3人がまた現われた。
赤毛が「マリ姉働いてる?」
「おう、ちょうど良かった。3人に話あったんだ」
「なんすか?」
「あんたらその格好を変えなよ。私、先生に呼び出されてさ『マリお前、最近3人の不良と付き合ってるのか?』って言われたんだ。なにそれ?って聞いたら噂が出てるぞって。バッカじゃねぇのって言い返したけど、よく考えたらあんたらの格好はどう見てもヤンキーだよ。もう、その格好やめなよ。頭も黒くして、相手を下から上に舐めるように見る癖も駄目!分かった?その格好は禁止!それが嫌なら縁を切る・・・」
「マリ姉がそう言うなら…わかった」
3人はすごすごと退散した。
それから数日が経ちマリのもとにまた3人が現われた。
髪を黒く染めスカート丈も普通になった。その姿を見たマリが「へ~あんたら可愛くなったね、そのほうがずっといいよ」
「なんか、恥ずかしいけど……」