ピ リ カ(動物と会話する女の子)
「ふっ、久々にミミのべ~べ~聞いた。 あんたは変わらないね!」

「おや、おかえり」母親が言った。

「なんかいいこと、あったのかい?」

「ミミが可笑しいの」

「そうだ、ちょうどいいところに帰ってきたよ」

「なにかあった?」

「うん、お父さんが今日の仕事帰りに犬を連れて帰ってくるの。 ヨークシャー・テリアの子供なんだけどね、知り合いが譲ってくれたみたいなの。 またメスらしいの」

「へえ~、ヨーキーか楽しみ」

そこにミロが帰ってきた。

「わ~ピリカ姉ちゃんだ! なんかちょうだい!」

「あんたねぇ挨拶なしに、いきなりなんかちょうだいなの?」

「べ~」

「始まった。 都合悪いとすぐべ~ね。あんたら親子は」

「ユメはべ~ いわないよ」

「ユメはモモに育ててもらったからそんなこといわないの」

「はは~ん、ピリカ姉ちゃんまだ知らないんだ……」

「なにが? ユメがどうかしたの?」

「ユメねぇ、近所で有名なゴン太と付き合ってるのよ」

「へぇ~、ゴン太っていうの、別にいいじゃない?」

「ゴン太って子供三十四匹いるんだよ!」

「へぇ~やるもんね」

「もう出来てるかもね」

「ミロ、それ本当なの?」

「しらな~い」

ミロはそのままいなくなった。

「ねぇお母さん、ユメに子供出来るかも知れないってミロがいってるよ」

「うっそでしょ……」母親のコーヒーを入れる手が震えていた。

それから数時間後、父親が子犬を連れて帰ってきた。

「ただいま~」

「お帰りなさい、お父さん」

「おう、ピリカ来てたのか。 ちょうどよかった。 今日から我が家の家族になるワンちゃんだ」

父親が段ボール箱をそっとピリカに手渡した。 ピリカが取り出したのは生後三ヶ月のヨークシャー・テリア。

「わ~! あんた可愛いね……」

子犬はピリカの顔を不思議そうに眺めた。

「驚かせてごめんね、私はピリカ。 あなたと話が出来るの宜しくね」

「ここどこ……? お母さんって帰る」

「今日からここがあなたの家なの、他にもあなたの仲間がいるのよ」

「か、え、る、もん」

「お母さん、みんないないの?」

「さっきミロがいたけどチョットみてくるね」

母親がミミとミロを抱えてきた。

ミミが「ピリカ、この犬なに?」

「今日から仲間になる子」

「名前は?」ミロが聞いた。

「そっか……チョット待ってね」

「お父さん、この子名前は?」

「前の家ではミルキーって呼んでたみたいだけど。 なんか適当に考えようか?」

母親が「ミルキーか…… それでもいんじゃない?」

ピリカが「可愛い名前ね、私も賛成」

「じゃあ、我が家もミルキーで決定!」父が言った。

ピリカが「ミミ、ミロ、この子はミルキーです。 宜しくね」

「いやだ…… 帰る。お母さんって帰る」小さな声のミルキー。

ミロが「この家は楽しいよ…… 遊ぼうよ」

「お母さんって帰る、帰る、帰る……」

その日、ミルキーは一晩中リビングで鳴き通した。

翌朝、ユメが顔を出した。

「ユメお帰り、朝帰り?」ピリカが言った。

ユメはピリカを無視して「おはよう、ミルキーちゃん。 私、ユメだよ……」

「帰る……お母さんって帰る」相変わらずのミルキーだった。

ピリカが「夕べからずっとこの調子なのよ」

「なるほど。ミルキーあなたはこの家の子になったの。 だから私達と暮すの、わかりましたか?」

「暮らすの? この家で? お母さんは?」

ユメが「そう、暮らすの。 でも、ミルキーのお母さんはもうミルキーとは別に暮らすの……
わかった?」

「ハイ」小さな声で呟いた。

ピリカが「ユメ、ミルキーは今なんっていったの?」

「ハイって……」

「うっそ……?」なんでそんな簡単に?

「この子、自分の状況がわからなくて不安だったみたい。 だから、この家の子になるんだよってそれだけ。 そしたらハイって」

「ユメ、あんた凄いね!」

「だって、私の彼ったら子だくさんだから色々子育てのコツ聞いてるもん」

「たしかゴン太とかいう、子だくさんの猫よね?」

「ピリカ姉ちゃん、誰に聞いたの?」

「ミロだけど…… どうかした?」

「あいつ、ゴン太にふられたもんだからそんな言いかたして」

「なにもゴン太の悪口いってなかったよ、ていうかミロはゴン太にふられたの?」

「そう私が勝った」

「あんた達ね姉妹でしょ…… まったく。 それより、これからはミルキーの面倒見てね」

「うん、わかりました」

「ミルキーよかったね、ユメ姉ちゃんが面倒見てくれるって」

「ユメ姉ちゃんが私の新しいお母さんになるの?」

「私、あんたのお母さんではないけど…… まっ、よろしく」

「ユメ母さんって呼んでいいですか?」

「まぁ、勝手にしな……」

それからのミルキーはユメにべったりだった。

シリパは経緯を父と母に報告し札幌に帰った。 その後、ユメはミルキーの面倒と躾に忙しく、
ゴン太が誘っても拒否することが多くなり別れた。 妊娠はしていなかった。 ユメは死んだモモがやっていた犬の習性を熟知していたので、犬らしさをミルキーに教えていた。

父親がある時「母さん、ミルキーって死んだモモにどことなく習性というか仕草が似てないか?」

「私もそんな気がしてたの。 もしかしてユメがミルキーの躾してるから? でも、どっちにしろ早く我が家に馴染んでくれてよかった」

「本当だ…… 家に来た日は一晩中鳴いてどうなることかと思ったもんなあ」

「本当ね、ユメに感謝! そうそう、ピリカに電話しなくちゃ。あの娘心配してたから」
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