ピ リ カ(動物と会話する女の子)
なんの反応もなかった。 そのまま小樽の総合病院に搬送された。 救急車に同乗したピリカは手を固く握りしめ佐伯と同調を試みたが、ピリカの心が動揺してか上手くいかない。
その時、あのFさんの一件が走馬燈のように甦ってきた。 この空気感あの時と似ているピリカは少し緊張した。 その時だった。心の奥からさっきの感覚を感じた。
医者に経緯を聞かれピリカは「原因は脳脊髄系への圧力で、変異した神経により組織に硬変を起こし、肺臓皮膜に圧迫を加えている。 これが自律神経に影響を及ぼしてる」
さらに治療法、必要な道具や術後の注意点なども詳しく説明した。 それはピリカの口から勝手に出た言葉だった。
医師が目を丸くして尋ねた「奥さんは医師又は医療関係の方ですか?」当然の質問であった。
「何故、奥さんがそこまでわかるんですか?」
「すみません、口から勝手に出た言葉なんです。 でも、その様な処置をお願い出来ませんでしょうか?」
「それは検査の結果、我々が考える事ですから」医師はやや憮然とした口調で言った。 当然の返答だとピリカ自身思った。 でも、人間の身体の知識が無い私の口から出た言葉なんだから、偶然と思わないで捉えて欲しいと心で願った。
「ルーどうすればいいの?」
次にピリカの口から「そう言えば昨日の農作業中、脚立から落ちたと言ってましたが、元気だったので何も処置しませんでした」
「そんな事があったんですか? わかりました。それも念頭に置き検査します」
ピリカはひとまずホッとした。 検査の結果、外的疾病は認められないのでピリカのいう神経系統の方向で検査をすると云う報告がなされた。 佐伯は意識のないまま集中治療室に入り、 ピリカは自宅待機ということで帰宅した。 翌朝、クロ助の鳴き声で飛び起きた。
「クロ助どうかしたの?」話しかけたが応答がなかった。
そのまま何もいわずクロ助は飛んで行ってしまった。 なんなの? 人を起こしておいてあの態度。 瞬間、何かの予感がした。
「ルーこの感覚はなんなの?」
「電話」即返答がきた。
電話しろという事?
電話が来るという事?
寝室に置いてあった携帯が鳴った。
「はい」
「佐伯さんですか?」
「ハイそうです」
「小樽総合病院ですが」
「はい、お世話になってます」
「ご主人の意識が戻りましたので報告いたします」
「はい、ありがとうございました」
「今後の処置の事で担当医から話しがありますので、午前十時頃当院までお越し頂けますか?」
「はい、伺います」
電話を切ってすぐ「ルーありがとう」と心で礼を言った。
その後、佐伯は三日で退院し戻ってきた。
「僕の主治医が君の事を絶対に医療経験者だと思ってるよ。 だから、獣医師で犬猫や家畜専門ですって説明したんだが、あの場であんなに的確な処置方法を言い当てるのは、医師以外だとよほど経験を積んだ救急医か、神懸かりだろうって言ってたよ。 ピリカはあの時、病院でいったいなにを言ったの?」
「内緒」
「何だいそれ……」
「私も全然覚えてないの。 口が勝手に動いたの」
「ピリカならありえるね」
「なにそれ…… そう言えば話し変わるけどクロ助が帰ってこないの。 入院した翌朝、鳴くのを聞いて話しかけたんだけど何の返事も無かったのね。 それがクロ助を見た最後だったわ」
「巣立ちか?」
「チョット遅い巣立ちかもね。 どっちにしても佐伯さんが退院してよかった。 あとは療養しながらね」
佐伯は順調に回復し普段の生活に戻った。 但、しクロ助からの音沙汰が無く月日は過ぎ去った。
ピリカが「もうクロ助は帰らないね。 犬か猫でも飼おうか?」
「そうだね、折角一軒家にいるんだからなにか飼おうよ。 病院のお客さんで誰かいないの?」
「いるけどどっちがいい?」
「うん、両方がいい?」
「そうだ、倶知安の実家はみんなメスだよね?」
「そっか、連絡してみる」
それから半年後、ミルキーの子とミミの子がやってきた。 両方メスだった。
「私がピリカでこの人が佐伯さん、宜しくね」
ミルキーの子が「お家に帰る。 お家に帰る。 ポン」
ミミの子は親に似ず素直だった「お願いします。 ビー」
「僕は佐伯ですよろしくね。 名前が無いようだから可愛い名前考えようか? そうだミルキーの子犬はココアちゃんで、ミミの子猫がペコちゃんどう?」
ピリカが言った「可愛いね! ココアとペコちゃんかぁ。 決定。 あんたは今日からココアで、あんたがペコちゃんわかった?」
「お家帰る。 お家帰る。 ポン」
佐伯が「ココアの帰る攻撃しばらく続きそうだね」
ペコが「オシッコとミルク ビー」
「あっ! ごめんごめん、今用意するからね。 あんたお行儀良いのね、ミミが教えてくれたのかい?」
「ビービービ~」
「わかったからもう鳴かないの。 ペコはやっぱりミロにも似てるかな?」
「お家帰る。 お家帰る。 ポン」
二人は口を揃えて言った「今日は寝不足になりそう」
それから一ヶ月が過ぎた日曜日の昼間。 ピリカは二匹に日光浴させようと庭で遊ばせていた。 突然、空から黒い影が視界に入った。 その刹那トンビが子猫のペコをわしづかみにして飛び去った。 一瞬の出来事だった。 ココアの叫び声を聞きピリカが掛け付けた時にはすでに遅かった。 トンビは低空飛行をしながら三十メートルほど離れたところを飛んでいた。
「しまった~」ピリカは走り出した。
その時、ひとつの黒い影がなんとトンビに対して攻撃を仕掛けていた。
「あれはもしかしてクロ助?」
「カァ~ カァ~」
この聞き慣れた声はまさしくクロ助。
ピリカは叫んだ「クロ助! お願い! その子猫を助けて~」
又声がした「カァ~ カァ~」
そこにもう一羽のカラスがやってきてクロス助の加勢をした。 二羽の攻撃にトンビは思わず子猫を放した。 子猫は藪の中に落ちピリカが駆けよりそっと抱えた。
トンビはそのまま立ち去って行った。
「ピリカ~ ただいま。 かぁ」
「お帰り~クロ助。 ありがとうね。本当にありがとうクロ助!」
「佐伯さんは?」
「お仕事だよ。ねぇクロ助今まで何処に行ってたのさ?」
「山! かぁ」
「そのカラスさんは誰?」
「僕の旦那さんだよ」
「……?えっ旦那? あんたメスだったの?」
「そう、僕はメスだよ……かぁ」
「げ~ げ~ 知らなかったそうだよね、どおりで小型だと思ってた」
「ピリカ、その猫と犬は?」
「うん、クロ助がいなくなって淋しくってさぁ、 犬と猫ちゃん飼ったの。 犬がココアで、クロ助が助けた猫がココアちゃん。 仲良くしてね」
その後、ピリカは佐伯と結婚し男女二児の母親となり、そして犬と猫と二羽のカラスの母親と して幸せに暮らしました。
THE END
その時、あのFさんの一件が走馬燈のように甦ってきた。 この空気感あの時と似ているピリカは少し緊張した。 その時だった。心の奥からさっきの感覚を感じた。
医者に経緯を聞かれピリカは「原因は脳脊髄系への圧力で、変異した神経により組織に硬変を起こし、肺臓皮膜に圧迫を加えている。 これが自律神経に影響を及ぼしてる」
さらに治療法、必要な道具や術後の注意点なども詳しく説明した。 それはピリカの口から勝手に出た言葉だった。
医師が目を丸くして尋ねた「奥さんは医師又は医療関係の方ですか?」当然の質問であった。
「何故、奥さんがそこまでわかるんですか?」
「すみません、口から勝手に出た言葉なんです。 でも、その様な処置をお願い出来ませんでしょうか?」
「それは検査の結果、我々が考える事ですから」医師はやや憮然とした口調で言った。 当然の返答だとピリカ自身思った。 でも、人間の身体の知識が無い私の口から出た言葉なんだから、偶然と思わないで捉えて欲しいと心で願った。
「ルーどうすればいいの?」
次にピリカの口から「そう言えば昨日の農作業中、脚立から落ちたと言ってましたが、元気だったので何も処置しませんでした」
「そんな事があったんですか? わかりました。それも念頭に置き検査します」
ピリカはひとまずホッとした。 検査の結果、外的疾病は認められないのでピリカのいう神経系統の方向で検査をすると云う報告がなされた。 佐伯は意識のないまま集中治療室に入り、 ピリカは自宅待機ということで帰宅した。 翌朝、クロ助の鳴き声で飛び起きた。
「クロ助どうかしたの?」話しかけたが応答がなかった。
そのまま何もいわずクロ助は飛んで行ってしまった。 なんなの? 人を起こしておいてあの態度。 瞬間、何かの予感がした。
「ルーこの感覚はなんなの?」
「電話」即返答がきた。
電話しろという事?
電話が来るという事?
寝室に置いてあった携帯が鳴った。
「はい」
「佐伯さんですか?」
「ハイそうです」
「小樽総合病院ですが」
「はい、お世話になってます」
「ご主人の意識が戻りましたので報告いたします」
「はい、ありがとうございました」
「今後の処置の事で担当医から話しがありますので、午前十時頃当院までお越し頂けますか?」
「はい、伺います」
電話を切ってすぐ「ルーありがとう」と心で礼を言った。
その後、佐伯は三日で退院し戻ってきた。
「僕の主治医が君の事を絶対に医療経験者だと思ってるよ。 だから、獣医師で犬猫や家畜専門ですって説明したんだが、あの場であんなに的確な処置方法を言い当てるのは、医師以外だとよほど経験を積んだ救急医か、神懸かりだろうって言ってたよ。 ピリカはあの時、病院でいったいなにを言ったの?」
「内緒」
「何だいそれ……」
「私も全然覚えてないの。 口が勝手に動いたの」
「ピリカならありえるね」
「なにそれ…… そう言えば話し変わるけどクロ助が帰ってこないの。 入院した翌朝、鳴くのを聞いて話しかけたんだけど何の返事も無かったのね。 それがクロ助を見た最後だったわ」
「巣立ちか?」
「チョット遅い巣立ちかもね。 どっちにしても佐伯さんが退院してよかった。 あとは療養しながらね」
佐伯は順調に回復し普段の生活に戻った。 但、しクロ助からの音沙汰が無く月日は過ぎ去った。
ピリカが「もうクロ助は帰らないね。 犬か猫でも飼おうか?」
「そうだね、折角一軒家にいるんだからなにか飼おうよ。 病院のお客さんで誰かいないの?」
「いるけどどっちがいい?」
「うん、両方がいい?」
「そうだ、倶知安の実家はみんなメスだよね?」
「そっか、連絡してみる」
それから半年後、ミルキーの子とミミの子がやってきた。 両方メスだった。
「私がピリカでこの人が佐伯さん、宜しくね」
ミルキーの子が「お家に帰る。 お家に帰る。 ポン」
ミミの子は親に似ず素直だった「お願いします。 ビー」
「僕は佐伯ですよろしくね。 名前が無いようだから可愛い名前考えようか? そうだミルキーの子犬はココアちゃんで、ミミの子猫がペコちゃんどう?」
ピリカが言った「可愛いね! ココアとペコちゃんかぁ。 決定。 あんたは今日からココアで、あんたがペコちゃんわかった?」
「お家帰る。 お家帰る。 ポン」
佐伯が「ココアの帰る攻撃しばらく続きそうだね」
ペコが「オシッコとミルク ビー」
「あっ! ごめんごめん、今用意するからね。 あんたお行儀良いのね、ミミが教えてくれたのかい?」
「ビービービ~」
「わかったからもう鳴かないの。 ペコはやっぱりミロにも似てるかな?」
「お家帰る。 お家帰る。 ポン」
二人は口を揃えて言った「今日は寝不足になりそう」
それから一ヶ月が過ぎた日曜日の昼間。 ピリカは二匹に日光浴させようと庭で遊ばせていた。 突然、空から黒い影が視界に入った。 その刹那トンビが子猫のペコをわしづかみにして飛び去った。 一瞬の出来事だった。 ココアの叫び声を聞きピリカが掛け付けた時にはすでに遅かった。 トンビは低空飛行をしながら三十メートルほど離れたところを飛んでいた。
「しまった~」ピリカは走り出した。
その時、ひとつの黒い影がなんとトンビに対して攻撃を仕掛けていた。
「あれはもしかしてクロ助?」
「カァ~ カァ~」
この聞き慣れた声はまさしくクロ助。
ピリカは叫んだ「クロ助! お願い! その子猫を助けて~」
又声がした「カァ~ カァ~」
そこにもう一羽のカラスがやってきてクロス助の加勢をした。 二羽の攻撃にトンビは思わず子猫を放した。 子猫は藪の中に落ちピリカが駆けよりそっと抱えた。
トンビはそのまま立ち去って行った。
「ピリカ~ ただいま。 かぁ」
「お帰り~クロ助。 ありがとうね。本当にありがとうクロ助!」
「佐伯さんは?」
「お仕事だよ。ねぇクロ助今まで何処に行ってたのさ?」
「山! かぁ」
「そのカラスさんは誰?」
「僕の旦那さんだよ」
「……?えっ旦那? あんたメスだったの?」
「そう、僕はメスだよ……かぁ」
「げ~ げ~ 知らなかったそうだよね、どおりで小型だと思ってた」
「ピリカ、その猫と犬は?」
「うん、クロ助がいなくなって淋しくってさぁ、 犬と猫ちゃん飼ったの。 犬がココアで、クロ助が助けた猫がココアちゃん。 仲良くしてね」
その後、ピリカは佐伯と結婚し男女二児の母親となり、そして犬と猫と二羽のカラスの母親と して幸せに暮らしました。
THE END


