Beast Love

その獣は、気まぐれ

開いた向こう側は、あれだけ騒がしかったのに一瞬で静まり返った。


……いや、まだ静かにざわついていた。


無法地帯とも言うべき髪色や派手なりをした不良たちは、ジーっと編入生の私を見つめている。


「お、女だーーっ！！」


誰かがそう叫んだ瞬間、教科書や鞄が宙を舞った。


室内は再びお祭騒ぎに包まれる。


宇佐美先生の言っていた通り、女子生徒の姿は無く、20人ほどの男子生徒しか見当たらない。



(うぉぉぉ、早く帰りたいっ。胃が、胃が痛いキリキリする)


ヒャッホー、と猿のような雄叫びが飛び交う、その時だった。


「テメェら、静かにしろ！ ちょっとは黙って話聞け！」


すぐ隣から、任侠ドラマに出てくるような野太い迫力ある怒号が教室に響き渡る。


宇佐美先生が、怒鳴り声をあげたのだ。


(そ、そんな、声も出せるんだ……)


不思議と男子生徒たちは大人しく席に着き始めた。